さて、ムロに移された豆がそこで成長して、もやしになるまでその成長が健やかであれば、私たちもやしを育てる者は何もしません。もちろん毎日よく見届けて、
もやしが何かを訴えているようであれば、その希望を叶えるよう計らいます。
例えばもやしにとってムロが寒ければ、その成長が著しく遅れます。暑過ぎれば、もやしの発芽熱が危険域まですぐに高まり、悲鳴をあげます。その悲鳴はムロから離れた事務所からでも感じ取ることが出来ます。
【もやしの病気】
もやしも時々病気にかかります。私のところでは最近は滅多にありませんが、原料にもともと付着していた菌が成長過程で繁殖して、栽培枠のもやしが腐敗することがあります。不思議なもので、栽培枠はいくつも分かれているのに、一度一つの枠から腐敗が始まると、他の栽培枠のもやしまで伝染します。まるで流行疾患が蔓延するようです。こうなると、日々安定した供給を求められている、もやし生産者にとって、もっとも苦しい状況になります。私たちは、こういう状況に直面した時、まず最初に
『ムロの仕切りを全て開けて、外気を入れて空気を入れ替える』
ことをします。室温もエチレンの濃度もガラリと変わってしまいますが、案外と効果があります。密室で育つもやしですが、やはり野菜である以上、「外との繋がり」によって救われるものなのかもしれません。
では、ムロの中で育つもやしのありのままの姿をご覧下さい。
まず栽培枠の中はこのようにもやしが育っています。これはブラックマッペもやしです。
これはそのブラックマッペの発芽後、三日目の姿です。ここまでくると十分もやしとして食べることが出来ます。
味は、ご覧の通り豆の味が強く残りますので通常のもやしよりも野菜の濃さがあります。
これは7日目のブラックマッペもやし。このもやしが数時間後に洗浄、包装され、市場に納品されます。
栽培枠の上部にあるもやしを引き抜いたので、すこし細目です。胚軸(身の部分)と根の長さが同じくらいなのが確認できるでしょうか。
そしてもやしの頭には豆が残ってます。根をよく見ていただけると、根の周りに小さなひげ根が生えているのが見えます。
こちらは緑豆もやしです。ブラックマッペに比べると胚軸はやや太めです。そして根の部分を見てください。ブラックマッペよりもひげ根が多いのが分かります。これはこのもやしが、
もっと雨を欲していることを
私達に伝えてます。ただもやしも人間と同じで
少々何かを欲しているくらいの方が、欲求が完全に満たされないくらいの方が、そのものの味が良い・・
と、私は思うのです。
この二つの写真を見ていただければ、
もやしは工業製品ではなく、生きている野菜
だということがお分かりになると思います。