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もやしとエチレン

 

もやしとエチレン
 
 これは家庭で栽培した発芽して1週間後のブラックマッペもやしです。
 

 
そしてこれは飯塚商店のもやし栽培室(ムロ)で育成した同じく発芽から1週間後のブラックマッペもやしです。

 
 この明らかな形状の差は、植物が自ら持つホルモンの一つであるエチレン処理されているかいないかの違いによるものです。今やもやし屋が作るもやしにエチレンは必要不可欠なものになっています。いや、もやしだけでなく、多くの農作物に利用されている物質、エチレン(C2=H4)。ここではもやしとエチレンの関わりについてお話します。
 
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 「見栄えの良いもやし」・・・・これは戦後まもなくしてあちらこちらで生まれた、国内のもやし屋にとって一つの目標でした。もやしは普通に作ればどこも形状はあまり変わりません。他のもやしとの差別化のため、少しでも他所より「太いもやし」「根の短いもやし」「白いもやし」「持ちの良いもやし」を・・・・と、どこのもやし屋も研究してきたことは間違いのないところでしょう。そこで最ももやしを太く、硬くするのに有効に使われたのがエチレンでした。
 
 私ども飯塚商店は1961年に設立以来、もやしの栽培をしてきていますが、その当時、栽培室に使う暖房の燃料には「おが屑」を使っていました。「おが屑」のほうが灯油より安かったからだと母親は言っています。しかし「おが屑」から発生する煙が、もやしを太くしていたという効果も実はありました。というのは、かつて福島県にはずんぐりと太くてパキパキとした会津もやしというものがあり、それは煙でいぶしながら作る・・・・ということを後に私が読んだ文献にあったからです。もっとも当時の両親がそこに気づいていたかどうかはわかりません。ただずいぶん後になって父親が、
 
「石油ストーブを使ってムロを温めていたころ、ストーブが不完全燃焼を起こした時のもやしは太いのが出来た」
 
と言ってたのをよく覚えてます。こんな経験、当時栽培に関わっていたもやし屋さんはよく分かっているはずです。そう・・・おが屑を燃やした時の煙も、石油ストーブが不完全燃焼したときのあの石油臭い気体も、すべて植物ホルモンと同様の
 
エチレン(C2H4)
 
が含まれていたのです。
 
 
 
 
 
 
 こちらは家庭栽培の発芽後5日目のもやしです。
 
 
 こちらはもやし栽培室での発芽後5日目のもやしです。
 
 
 両方のもやし、この段階では7日目ほどの大きな違いが現れていません。エチレンは植物の成長に様々な影響を与えますが、こともやし栽培に関しては発芽して4~5日目までは大きな影響がないことが分かります。これ以降もやしは上に上に伸びようとするのですが、そこでエチレン処理することにより成長を抑制し、その分、胚軸(茎の部分)を太く硬くすることができるのです。
 
 そしてエチレン処理されたもやしの特徴として、首の部分(豆がついている部分)が曲がること。もやしの中の細胞の離層形成(木の葉や花、実が落ちるときに作られる組織)が進むことで豆が離脱※しやすくなり、葉は小さく下に垂れて、葉の色は淡い黄色になります。
※これは家庭栽培7日目のもやしの中間部に残っている豆(種子)です。このように自然に育った状態では、ここまで伸びても豆が離脱することはありません。いかにエチレンがもやしの組織の形成に影響しているかが伺えます。お店で一般的に売られているもやしを見ていただければ、その違いは一目瞭然です。

 このように、もやし屋のもやしとエチレンは今や一心同体。切っても切れぬ関係にあります。ではエチレンがないともやしは作れないかと聞かれれば、そんなこともないのです。
 
 この家庭栽培の発芽後5日目のもやし、
 
 
これはもう十分に食用に適しています私としてはこのもやしを提供できればそれで良いのではないかと思うのですが、皆さんもお店でご覧になるとおり、この形は市場に出ている一般的なもやしの姿とはかけ離れています。そしてこれは重要なことですが、エチレン処理の強いもやしは太く堅く長持ちがしますが、発芽野菜としての組織が大きく変わりますので風味が損なわれることは否めません。
 
 こんなことを書いてしまいましたが、私自身は決してもやしの形を整えるためエチレン処理を施すことが悪いことだとは思いませんし、現に私も微量でありますが使っています。安全性に関しては、エチレンという植物自信が持つホルモンの生理作用を、人為的に活用しているので、栽培室内で人が息苦しくなるほどの濃度のエチレンで充満されてない限りは問題ないと思います。 ただ食の多様化のため、真にありのままのもやしの価値を知ってもらうためには、エチレン処理をされてない、豆の養分と水だけで育った純粋な発芽野菜としてのもやしが受け入れられる世の中であって欲しいな、という願望はあります。